風をいつかつかまえることができるだろうか?
私は宮崎駿の世界が好きだけれど、「風の谷の
ナウシカ」を何度もみていて、この人も風が好き
なんだろうなー、空を自由に飛ぶことができる風
をつかまえて生きている人なんだろうなーと思っ
てきた。風の映像はむつかしい。いつか風を感じ
る俳句を詠んで写真で表現したいものだと思う。
盆の朝ふるさと無人駅に立つ
風の道照らすがごとき尾花かな
萩の花迫りくる雨知らず咲く
どら猫を照らす今宵の名月や
渡り鳥道無き空を嘆かざり
木の葉散る肩に一枚手のごとし
地平線風が流るる麦畑
宵闇に語り部の声高まりぬ
煙立つ村に寄りそふ秋の山
虹かかる異国に立ちて我思ふ
闇抱きて蛍袋の白さかな
包丁のリズム軽やか今朝の秋
林檎煮るフランスの鍋取り出して
秋風や風をつかまへ琴流る
秋の朝シルエットのごと二羽の鳥
おしどりや並びて前を見つめをり
蝋燭を灯しジャズ聞く夜半の秋
新蕎麦や一人旅して舌づつみ
雨合羽着てでも挑む栗拾い
草むらの闇広げゆく虫の声
月見するこの家を終の住処とし
竜胆の活けるを拒み直ぐと立つ
葉生姜の笊よりいでし露店かな
脇役と言えど光りし紅生姜
家の灯を待ちわび歩く夜寒かな
散り行くをとどめんと描く冬紅葉
冬紅葉柿渋染めの手を休め
モノクロの笑顔変わらぬ七五三
小春日に父思ひだす古時計
夕月や闇開かれし天も地も
いとど跳ね時は昭和へ遡る
名月や今宵おおぞら従へり
乱れ萩心の枷のなきままに
竜胆を活けて整ふ時空かな
留まりし定めにゆれる案山子かな
君と会ふ檸檬ゆっくり空に投げ
ブルマーの少女ざわめく運動会
夜神楽や舞ぼくとつに笛はやる
芋煮会振舞酒の旨きかな
鰯雲始発見送る橋の上
楠は幾としここに月出づる
いくたびも生まれ出づるや秋の雲
出窓より外界恋ふる冬の猫
颱風や天にも地にも我を通す
こおろぎのつと鳴き止むや書を閉じる
炎天に人の消えたる街歩く
秋雨や鹿の瞳のますぐなる
無縁仏すすきの原に気配なく
家康のからくり時計秋に舞ふ
薄紅や内堀に今水はなく
神橋を渡りて城へ秋高し